鬼城家専属の一流シェフが作っているのだ。
まずいわけがない。
しかし、よくある話で、一流のシェフの料理はおいしいが「味に飽きる」という事件。
私にはこれがない。
まったく味に飽きるというようなことがないのだ。
さすが、鬼城家専属一流シェフ。
他のところとは比べ物にならない。
そして気づけば、そろそろ家を出る時間だ。
今日は、学園は休み。
そして、私の誕生日ということで父さまと母さまの3人で出かけるのだ。
朝食をすませ、また自分の部屋へ戻り身支度を整える。
今日1日が楽しみで早く目が覚めたというのもある。
父さまも母さまもいつも仕事で忙しい。
鬼城家に休暇はない、と言わんばかりに大忙しのご様子だ。
しかし、今日は私のために休暇を作ってくれたらしい。
どこへ連れて行ってもらおうか。
水族館か、遊園地か、海か、それとも―――
コンコンッ―――
その時、部屋のドアがノックされた。
「はい。」
「姫乃、入るわね」
「母さま、どうぞっ」
部屋に入ってきたのは、仕事着の母さま。
そして、その母さまの後ろには仕事着の父さま・・・。
「ど、うして?」
「姫乃、それがね・・・」
「父さまと母さまは、急な仕事が入ってしまったんだ。」