「今?でも、それでは意味がないだろう。呼ばれても自分だとは」
「いいですから。どのようなお名前をお考えで?」
「それは・・・」
小さくて、フワフワで、可愛くて、あ、あれは男の子だったか?
女の子だったか?しまったな・・・
だとしたら、どちらでも使えるような・・・そうか、これなら。
「し、ろ」
「え?」
「シロ、が良いかな」
「シロ、ですか。」
「あぁ。シロにしよう。これで、捜してくれるか?」
「はい。かしこまりました。では、すぐにお連れします。」
「え?」
すぐ、ということはあの犬、シロの居場所を知っているのだろうか。
「そうか、頼んだぞ。」
「はい」
そして、私の部屋から出て行った、あの執事。
1分後―――
カシャカシャカシャッ―――
扉の向こうから、何かがひっかくような音がした。
そっと扉を開けると、誰もいなかった。
「なんだ、誰もいないではないか・・・。まさか、帰ってきたのかと思ったが・・・」
薫が帰ってくる、というのではなく、あの男が帰ってきたのかと思ったのだ。
シロ、を連れて。
でも、いないということはやはりまだ見つかっていないということなのだろうと思い扉を閉めようとした。
が、私は気づいた。
「・・・っ!?」