「本当にあの時はキツかったな。」

「ね。今はこんなにも幸せだけど。」


「だな。幸せすぎて死ねそう。」
「まだ、死なないでよ!せめて新婚旅行が終わるまで!」

「俺の人生短いですねー。姫乃さん。」


「長かったじゃないですか。20年も生きたんですよ?」

「そうですねー。」


飛行機の窓の外をのぞいたまま返事をする薫。

完全にふててしまったらしい。


相変わらずな、薫。




「薫。」

「なにー。」


「私の執事になってくれて、彼氏になってくれて、旦那さんになってくれてありがとう。」

私のその言葉を聞いて、窓からこちらを向く薫。


そして、あの優しい笑顔で答えてくれるのだ―――


「俺こそ、こんなかわいいお嫁さんをもらっちゃって。ありがとう、姫乃。」


「・・・・・・」

「あれ?姫乃?」
「み、見るな!」


「あ、照れてる照れてる。」

「照れてなどいない!」

「知ってるか?姫乃、いまだに照れたりテンションあがるとお嬢様言葉が出てくるの。」


「そんなこと!」


・・・ある。

だからこれ以上は言わない。
自分が惨めになってくるから。


「耐えてる耐えてる」と隣から聞こえてくるのは無視して。




そして、飛行機が着陸した。


「さぁて!姫乃、新婚旅行楽しもうな。」


「あ、薫。言ってなかったことがあるんだけど・・・」
「なに?」


「実は・・・・・・です。」