「薫、これ。」
「何?」
それは、薫に頼まれていたもの。
「・・・っこれ。」
「描いたんだ。ちゃんと。どう、だ?」
「これ、俺ですか?」
「・・・だめか?」
「いや、すげー嬉しい。」
私が思う薫は『月』だった。
たくさん考えて、たくさん悩んだけどやはりこれしかなかった。
薫は私にとって明るい月だった。
どこにいても見つけられそうなくらい明るくてきれいな月。
暗い夜空でもひときわ輝いているのは、月。
私の中で暗い気持ちの時も、明るい気持ちの時も、輝いているのは薫だった。
だから、私にとっとは薫は『月』に似ている思ったんだ。
「さんきゅう、姫乃」
鬼城家に戻り、私の部屋に向かう。
そして、そこに2つの作品を並べた。
それは、薫が私に似ていると言ってくれて描いた『バラ』。
そして、私が薫に似ていると思って描いた『月』の2作品。
「・・・バラと月か。出逢わないはずの2つが出逢ったな。」
「私たちのように、だな?」
「「ははっ」」
2人で笑いあった。
2か月間の時間を埋めるように。
そして、薫が私のことをそっと抱きしめる。
「今日、俺この家に泊まることになってるんだ。」
「うん・・・」
「だからさ、姫乃が良かったら」
「いいよ・・・」
「はい!?早くね、返事!」