「懐かしいな。凛々香さんと和馬さん、だっけ?元気にしてるかな。」


「結婚するらしいよ。」

「は!?いつ!?」

「来月。あれ?薫知らなかったの?」


「知らねぇしー」


少しすねながら言う薫が可愛かった。

というのは言わないでおこう。
怒られそうだ。


「でも、一つ、違うことがあった。」

「ん?何。」


「薫、私たちは何か大切なことを忘れていないか?」


「大切なこと?」

夢の中に出てきたはずだが、思い出せない。



まるでその部分だけ抜き取られたように・・・。


「わからないな。夢の中の旅は面白かったですか?」

「・・・昔のころの気持ちに戻れたよ。」
「よかったじゃん。」

「辛かったけど・・・。苦しかったし、悲しかった。でも」


今は幸せ―――





あの日、薫がアメリカに行って2か月後。


薫が帰ってきた。

その時、私はあるものを持って行った。
それは・・・


「薫!」

「姫乃!!」


私と薫は空港のなかでありながら抱き合って、キスをした。

抱き合うまでは、2か月前にもしたことだったが・・・キスはさすがに恥ずかしかった。


「薫っ」

「姫乃っ」


「おかえり」「ただいま」