「・・・の」
「・・めの!」
「姫乃!」
「え?」
「え?じゃなくて。早く降りろよ。」
「薫・・・。」
「運転手さん困らせるなよ。」
「は、ごめんなさい!」
そこはタクシーでの出来事。
「いいえ。楽しんできてくださいね。」
「はいっ」
「姫乃ー!」
あわてて、タクシーのドアを閉めて薫の元へ走る。
「飛行機、間に合わねーぞ!」と言いながら走っていく薫を追いかける。
「待って!」
そして、何とか飛行機に乗り込む。
「危な・・・。乗り遅れるところだったろ。」
「ごめんなさい。」
「ったく。タクシーの中で寝てるからだろ。」
「私、どれくらい寝てた・・・?」
「ざっと2時間くらい。」
今日は柏木の車ではなくタクシーでここまで来たわけだ。
だから眠ってしまったのだ。
柏木の車なら、私のお気に入りの音楽が流れているため、寝ることはまずない。
だが、タクシーは静かで、つい寝てしまった。
「で、何か夢でも見てたのか?」
「え?」
「うなされてたけど、時々笑ってたぜ?」
「そんな・・・あ、でも懐かしい夢だったよ?」
「夢見てたんですか。」
そう、懐かしい夢だった。
確か、私と薫が18歳の時だったから・・・2年前のことか。
「薫がアメリカに行っちゃうところまで見てた。」
「いつから?」
「えっと・・・薫が凛々香の家に行ったあたりから。」