・・・あぁ、だめだ。



どうしても私の胸のドキドキは収まってはくれないらしい。

あの場で、私を見て、私の名で。




『姫乃だけだ』



などと言われては、この胸がこうなるのは当たり前か。

まったく。いつからあんなことが言えるようになったのだ。
かっこよすぎて・・・



「もっと好きになってしまうではないか・・・」

「いいですよ?」


そうか、よいのか。



・・・で、今なんと?え?今、だれが?

な、なぜそこにいるのだ!?



部屋に入るときはノックをしろ!

薫はいつもいつも勝手すぎるのだ。



この家で私と薫が付き合っていることなどもちろんのことだが内緒のことなのだぞ!
「お嬢様言っておきますが」




― もちろん、お嬢様の部屋に入る前にはノックをいたしました。それでもお嬢様のお返事がなかったので心配になって入ってみたところ、なんと告白をされてしまいました。この家の中では僕とお嬢様が付き合っていることなど、バレてはいけないご法度でございますので、以後お気を付けください ―




・・・なんと、私が思っていたことを全て言われてしまった。


パタンッ――

そっと自分の後ろにあったドアを閉めた薫。そして・・・

「ふぅ。これで、少しは普通に話せるか。な、お嬢様。」
「薫。さっき私が言ったいた独り言はだな、その、勝手に口から出てしまっただけだからな。」

「姫乃」
「だからな。あれだぞ。薫に言うための言葉ではなかったのだからな!」


「・・・・・・」