このまま部屋に戻るわけには・・・そう思っていたとき、あることを思い出す。

「そういえばっ」


それは、ある日の夜。


いつものようにシロと運動会をしていたとき。

急にシロがいなくなった時があった。


一生懸命探すと、ある場所にシロがいた。
そこは・・・



「・・・シロっ!」


鬼城家でもめったに使わない倉庫。

私自身、倉庫があったこと自体を忘れていたくらいの場所だ。


もしかすると、またあそこにいるかもしれない。
そう思った私は、あの倉庫へ急ぐ。


きっと、あの倉庫は誰も見ていないだろう。


まさかあんなところにいるなど誰も考えない。


鬼城家のなかでも、奥の奥の、ずっと奥にある部屋。



そして、私はその倉庫へたどり着いた。


そのドアをそっと開けると、そこにはある人の影があった。



それは、懐かしい人だった。




「・・・っかお、る!」


「はぁ、はぁっ、お、じょうさま。」

「なぜ、こんなところに香織が!」


白いタキシードを身にまとった香織がいた。

少し、前より痩せたのか少しそのタキシードもブカブカしていた。


「すみません、忘れ物を、とりに、来たのです。」
「忘れ物?」

「えぇ。でも、見つかりませんでした。」

「こんなところにあるのか?」


「あった、はず、です。」

「・・・香織、どうした?体調でも悪いのか?」


「いえ、ここまで走って、来たので、息が上がっている、だけです。」