私と薫はまた私の部屋へ向かった。



その時、私はアレをみたくなった。

薫と一緒に見て、思い出したかった。


「薫、大ホールへ入らないか?」
「大ホール?また絵でも描いたのか?」

「いや、描いてはいない。でも、見てほしいものがある。」


薫の頭の上を大量のハテナが飛んでいるように見えたが、気にせず大ホールの扉を開けた。



そこはやはりあの時のままで、入ってきた薫は「うわっ、なんだこれ」と少し驚いていた。


「どうしたんだよ、これ。・・・今まで描いてきた絵だろ!?」

「そう。薫と別れて、私が壊れたとき・・・破いた。」
「なんで、そんなことしたんだよ。」

「・・・思い出を消したかったんだ。あの時はそれほど苦しかったからな。」
「・・・・・・」


そして、私はあの絵を薫に手渡す。



「これ・・・」

「どうしても、この絵だけは破ることができなかった。だから、隠していたんだ。でも、私はまたこの絵を見つけた。そして、こうやってまた薫と一緒に過ごしたいという気持ちを見つけられた。」

「・・・すげーな。この絵。そんなすげー力があったんだな。」


その絵に描かれたバラの花が私を私に戻してくれた。

本当に、この絵にはすごい力があるのかもしれない。


「薫・・・」
「ん?」


「また私は絵を描きたいんだ。」

「・・・・・・」


「何を、描いてほしい?」


またいつか、描こうと思っていた。

でも、やはり薫がいないと何を描いたらいいのかわからなくて描けなかった。
だから、今、薫に尋ねるのだ。


薫はどんなものを描いてほしいと言ってくれるのだろうか。


「姫乃が思う、」

その課題はとても難しいものだった。

私が描いたことのないもの―――



『姫乃が思う、俺を、櫻井薫を描いてほしい』