数分後、柏木が運転する車によってシロは動物病院へ運ばれた。
私と薫も一緒に行くと言ったのだが柏木の気遣いからか「今夜はゆっくりされてください」と言って出て行ってしまった。
「シロは、大丈夫だろうか・・・。私がちゃんと世話をしていれば・・・。」
「動物も風邪はひくよ。大丈夫、薬で治るんだからさ。」
「うん・・・」
その後も薫は私の頭をずっと撫でてくれていた。
それから約1時間後、柏木の車の音が聞こえた。。
「帰ってきたのか!」
「降りてみるか。」
下に降りるとそこには柏木と、すやすや眠っているシロがいた。
「柏木、シロは?」
「薫さんの言われたとおり、ただの風邪でした。お薬もちゃんといただいてきましたからもう大丈夫でしょう。」
「よかったぁ・・・。」
一気に体の力が抜けた。
そんな私をそっと支えてくれるのは薫。
「薫さんのおかげですね、お嬢様。」
「あぁ。ありがとう薫。」
「いえ、礼には及びません。シロは家族の一員ではないですか。当然のことでしょう、家族を助けるのは。と、僕が言うと少し変ですね。」
苦笑いをしながら言う薫は少し寂しそうだった。
確かに薫は私の家族ではない。
でも、家族同然のようなものだ。
でも、きっと薫にそう言ったところで「僕は櫻井家の人間です」と言うだろう。
薫・・・私は、薫と家族になりたい。
薫は、どう思う?
「では、お二人ともシロのことはもう私に任せて楽しく過ごしてください。時間は限られているのですから。」
柏木のその優しさが心にしみる。
本当に、私は最高の人たちに囲まれているようだ。
「ありがとう、柏木。シロ、また明日見に来るからな。」
『スーッスーッ・・・』
返事の代わりに、気持ちのよさそうな寝息が聞こえてきた。