『お嬢様だけですよ』
「と、お伝え下さいとのことでした。私には何のことなのやら分かりませんが。」
あぁ。
これが私の、彼氏なのだ。
家に帰ってきたら散々に怒ってやろうと思っていたが、今回はやめておこう。
「大丈夫だ。私には分かった。」
「さようでございますか。では、お嬢様そろそろ。」
「そうだな。今度この景色を薫にも見せてやろう。」
今度は薫も一緒に。
この場所からこの景色を一緒に見よう。
柏木には、もちろん車にて待機しておいてもらおう。
私と薫の二人だけで時間を過ごしたいからな。
「そうでございますね。またの機会に薫さんもお連れいたしましょう。」
「よし。では、鬼城家に帰ろう。」
と、こんな気持ちで家に帰ったのが間違いだったのだ。