「はい。かしこまりました。」
そして、私と柏木は車に乗り込んだ。
いつもなら隣にいるはずの薫が今日は、今は、隣にいない。
この気持ちはどうしたらよいのだろうか。
「お嬢様。」
「なんだ、柏木。」
「寄り道をして帰ってもよろしいでしょうか。」
「・・・あぁ、構わない。」
寄り道か。柏木にしては珍しいな。
めったに寄り道などして帰ったりはしないのだが。
しかし、今日は私もこのまままっすぐ帰りたくはなかった。
ちょうどよかった・・・。
薫も、今ごろあの女と楽しく過ごしているのだろうな・・・。
そして、数分後に着いたそこは・・・
「お嬢様、いかがですか?」
「あぁ。キレイだな。」
そこはキレイな夕日の見える小さな丘であった。
下を見下ろせば町が一望できる。
鬼城家もここでは小さく見える。
この町のどこかに、薫がいるのだと思うとまた少し切なくなる。
「たたずまれているところ、申し訳ございません。お嬢様。」
「ん?なんだ。」
「薫さまからお嬢様に伝言がございます。」
薫から、私に伝言?
「伝言とはなんだ。」
「はい。それが、ただ一言でございましたが」