「なぜ謝る?」

「僕なんて、執事の身でありながら、お嬢様に恋心を抱くなど・・・」


「何がいけないのかな?」

「え?」


「ふふっ」という声が僕の背中の後ろから聞こえてきた。

その声は、真紀子さま。


「あら、ごめんなさいね。気にしないで?話を続けて。」

「実はな、私たちもそうだったんだ。」


「え??」


「執事と、お嬢様の関係だったわけでな。」


そんな事実は初めて知った。

あ、それもそうか、と思いつつも、緋絽、さんの話に耳を傾ける。


「私と真紀子もキミたちと同じくらいの時に恋をした。してはいけない禁断の恋だと知っていても、とめられなくてな。真紀子には許婚がいたんだが、それでも彼女は私を選んでくれたんだ。」


真紀子様の方を見ると、やはり笑っていた。

きっと、昔を思い出しているのだろう。
そんなにも、素晴らしい過去だったのだろうか。

いや、きっとそうだろう。

だって、お二人は―――


「幸せそうですね。緋絽さんと真紀子さまを見ていると、いつも思っていました。」

「まぁ、緋絽だけ『さん』なんて、やめて。私も緋絽と同じでいいのよ?」


「あ、はい。」


「ありがとう。そんな風に思ってくれて。でも確かに今は幸せだよ。」


それから緋絽さんはたくさん自分たちの過去を教えてくれた。

その内容は、僕と姫乃の恋とすごく似ていた。
だから、僕は真剣にその話を聞いていた。


「そこでな。思ったわけだ。もしかすると、薫くんも姫乃に恋心を抱くのではないか、と。」

「・・・実際そうなってしまいました。」

「それでいいじゃないか。姫乃も最近変わったように思う。薫くん、キミのおかげなんだろう?」

「そうだと、ありがたいです。」

「まぁ、そこは胸を張っていいのよ。」


「はい。」


「で、そこでなんだが」