僕はやはり、今でもお嬢様のことは大好きです。

でも、傍にいることは難しい。
だから、僕は違う形でお嬢様の傍にいます。



お嬢様。

あの時、僕に『好きだ』と言ってくださりありがとうございました。



本当は僕も言いたかった。でも、言わなかった。
僕は弱虫ですから。

いえ。
お嬢様にはまっすぐ前に進んでほしかったから。
そう言っておきます。





僕の最後のやせ我慢。
ここに記させていただきました。


お嬢様。
頑張ってください。

笑うときは笑ってください。

怒るときは怒ってください。

悩むときは悩んでください。



悲しむときは、ひとりで悲しまないでください。

ひとりで悲しむと、自分で自分を苦しめてしまいます。
だから悲しむときは、一人ではなく、誰かの傍で思いっきり泣いてください。
泣くことは恥ずかしい事ではありません。

自分が一歩前に進むためには、涙を流すことも大切なことです。


涙を流せば、きっと、きっと、何かが見つかるはずです。



それから、我慢はやめてください。

自分の気持ちにウソはつけても、体は、正直ですから。
お嬢様ならわかっているはずですが。


さて、お嬢様。
そろそろ、この手紙も終わりです。


お嬢様。
僕は今でもあの時の気持ちに、変わりはありません。


お嬢様。どうか、恐れずに前に進んでください。
お嬢様ならきっと大丈夫です。


薫さんを信じて、前に前に進んでください。

お嬢様が幸せになることを願って―――


僕はいつでもお嬢様の傍にいます。

それでは、またいつか。

犬正香織―――