姫乃お嬢様へ―――



こんな感じで別れてしまって申し訳ありません。

僕はもっとお嬢様に仕えていたかったです。

ですが、お嬢様の心には薫さんがいつもいましたから、僕の居場所はないだろうと思っていました。


それでも、お嬢様は僕にチャンスを与えてくれました。
でも、そのチャンスはお嬢様の本心ではなかったはずです。

僕は、それを知っていながらお嬢様とお付き合いをしました。


僕はお嬢様の隣にいることがとても嬉しかった。

ですが、それは束の間の時間だけでした。

僕は途中からとても寂しかった。

それは、お嬢様が僕のことを好きではないということではなく、お嬢様が薫さんのことをなかったことにしてしまったこと。

それが一番寂しかった。

やはり、好きな人に自分のことを忘れられるというのは寂しい事です。
ですから、お嬢様には薫さんのことを思い出してもらいたかった。


だから、僕はプラネタリウムにお嬢様を誘ったのです。



あの日は僕とお嬢様の記念日でした。
そんなとき、薫さんにプラネタリウムに行くということを聞いたのです。


その時、今日しかない、と思ったのです。

申し訳ありませんでした。
余計なお節介だったかもしれません。


でも、それでも、僕はお嬢様に後悔だけはしてほしくなかった。

お嬢様は、あの時どんなお気持ちでしたか?




それから、お嬢様に記憶を取り戻してほしいと思い僕なりにいろいろと考えていました。

ですが、お嬢様はご自分で見つけていました。


ご自分の心の鍵のありかを。


僕は本当に嬉しかった。
心からホッとしました。


そして、お嬢様がすべてを思い出した。


これで僕の役目は終わった。

これでいい。


そう自分に言い聞かせました。

でも、僕は弱かった。