少しひきつった笑顔をした薫。

それでもいい。


少しでも薫に近づきたいから。
だから私は、薫に少しづつでも、あいさつだけでも、声をかける。



「今日もいい天気だよね。」

「そうだな。」


「今日も一日頑張ろうねっ」


そして、薫の近くから遠ざかる。
それでも、私の中には薫がいるから寂しくなんかない。


こうやって、少しづつでも薫の中に私の存在を置いてほしい。
心の片隅でもいい。

それだけでも、私のことを想ってくれていたら、今の私は幸せです。



それから私は、休み時間になると薫に話しかけるようにした。


「疲れたね」

「さっきの授業眠たかった」

「お腹すいた」



何気ない一言。
でも、ちゃんと薫は返事をくれた。


「そうだな」

「俺も、眠かった」

「弁当しっかり食えよ?」


やっぱり、薫は優しい。





だから少しだけ、うぬぼれてもいいですか?




きっとまだ、薫は私のことを―――


好きでいてくれている、そう思ってもいいですか―――




そして、あっという間に時間は流れて―――


「じゃぁまたね。」

「あぁ。また」


今日一日が締めくくられた言葉。


寂しくないと言えばウソになる。
だから、正直に言う。



少しだけ寂しい。


「またね」の言葉が私の心に刺さる。