急に私の背後で声がした。


その声に驚いて、慌てて後ろを振り向いた、がそれが間違いだった・・・。

「誰よ!?っわ!」

「っ!おいっ!」




「・・・たた。・・・なんだ、薫か。」

「なんだじゃなくて・・・。姫乃!」



「すまん・・・。急に近くで声がして驚いて・・・」


「とりあえず!俺の上から降りて・・・くれませんか。」




「ん?」

降りる?



・・・・・・!

「ご、ごめんなさい!」

なんと、私としたことが。


先ほど、廊下で大声を出したときよりも、朝、薫に抱きついたときよりも今の方が断然恥ずかしいことになっていた。



私が勢い余って振り向いたおかげで、まさかの私が薫の上にまたがるようにして覆いかぶさるという珍事件が。


「ごめんごめんっ、はは・・・」

と、薫の上から降りたときだった。


『まもなく1限目が始まります。生徒の皆さんは各教室へ・・・』


という学園内放送が流れた。


「姫乃!急げっ!」

そう言いながら私の手を引いて走る薫。

廊下を走るなど、めったにすることなどない。


が、今はそんなこと!考えている時間が無駄だ!



そして、芸術ルームへ無事に着き、再び私と薫は一目を浴びた。

その後、薫は私に絵筆をそっと貸してくれた。



私の芸術の時間は、なんとか無事に済んだのであった。