やっと、思い出せた。


全てのことを。



あの日、私が壊れてしまった日。


あの日がすべての始まりだった。


「お嬢様。これからどうなさるおつもりですか?」

「私は・・・」




私の中で答えは出ていた。

それはとても簡単なこと。


でも、とても難しい事だった。



「私は、もう一度薫に恋をする。」


「恋?」



「あぁ。恋というものを思い出す。」


「すべて思い出されたのではないのですか?」

「思い出した。でも」


でも、それでも私は恋を始める。


「また恋からやり直したいのだ。あの、幸せだった日々のような恋を。」


今の私の表情はどんなものだろうか。

きっと、今までしてこなかった表情だろう。


だから、香織は驚いているのだろう?


「今のお嬢様はとても輝いておられますね。」

「そうか?」


「えぇ。それなら僕はもう必要ないかもしれませんね。」

「え?」


「お嬢様。恋というのは、辛いものです。怖いものです。悲しいものです。」

「・・・・・・」


「でもそれは、人を愛するときにはつきものです。辛くても怖くても悲しくても、パートナーと一緒に乗り越えられた先に、幸せがあるのですから。」


「香織・・・」


「一種の壁のようなものですね。今度はその壁を薫さんと一緒に乗り越えてください。」

「香織っ」