「えぇ。今日の放課後に一緒に来てほしいところがあって。買いたいものがあるから。」

「買い物ですね・・・。」


「だめ、かな?」



「あ、その・・・」


その時、薫が私のほうへ視線を送ってきた。

そして、その視線で私の心に何かが刺さったような気がした。




この場にいることが、耐え難い・・・。



「私、邪魔みたいだから、失礼しますね。」



この言葉しか私の頭には浮かばず・・・。

その場から足早に逃げ出した。

いや、逃げ出したわけではない。


ただ、なんとなくだがあの場所に居づらかっただけなのだ。


だから、だから・・・。




・・・・・・・・・・・・。


はっ!?

「しまった!」


廊下を歩いていた皆が一斉に私のほうを向く。

恥ずかしい、がそんなこと今はどうでも良い!


絵筆だ!絵筆のことでまだ何も解決してないではないか!


しかし、そもそもの話だが、あの男が私の鞄の中に絵筆が入っているのか見ていないことがいけないのだ。


そうか、私は悪くなのだ。

あの、ばか執事のせいなのだ。


・・・などと、そんなことを言っている場合ではない。

私が悪いのだから。


「はぁ。情けないな。この私が絵筆を忘れるなど・・・」



「その話し方、注意しろよ。それと、やっぱりそういうことだったんだな。」