いつの間にか先生の話が終わり、クラスがざわつき始めていた。


皆、芸術の準備に取り掛かったのだ。


いや、というか教室を移動する準備を始めたのだ。


芸術は、芸術ルームにて授業が行われる。


これは、本当にまずいことになった。

急いで、薫のもとに走り寄る。


「薫!」



「・・・ん?どした、姫乃。」


「その、あの、あれを、その、忘れ・・・」

「ん?何、ちゃんと言えよ。」



「だから、その・・・ないから、貸してほしいの!」



「・・・それは」

「薫くん。」


その時、タイミング悪く話に割り込んできたやつがいた。

それは・・・とても厄介な人物だった。




「あ、凛々香さん。」



この人物は、富士凛々香。

この学園内でもっとも有名な令嬢。


皆はこの女がお嬢様だということを知っている。

だから、凛々香と話をするときは大体の人間が敬語らしき言葉を使う。



ちなみにだが。


学園内でもっとも有名なお嬢様、というだけのことだ。

鬼城家と比べれば小さな家のお嬢様だ。


鬼城家が富士家などに負けるはずがない。


「薫くん、お願いがあって伺ったの。」

「お願い、ですか。」