私の中で何かが変わった瞬間だった。


いや、何かが戻った、瞬間だった。

それはとても簡単だった。



「香織。」

「何?」



「これからも私の傍にずっといて、ください。」


「・・・できることなら、そうしたいです。」

「え?」


「何でもないよ。姫乃、好きだからな。」

「はぃっ」



幸せだ。

これが幸せなのだ。


こうやって、好きな人の隣にいられること。
それが、幸せなのだ。




一人ではできないことも、二人なら乗り越えられる。

香織と一緒なら、何も怖くない。



この日、私と薫は恋人になった。



また、これからの日々が幸せな日々になっていくと思ったのだ。



・・・また。

そう、また、と。



私は、いつかこんな経験をしたことがあったのだろうか。


あの人と・・・。



でも、あの人は、誰なのか名前も忘れてしまった。
でも、なぜだかあの人のことをまともに見ることができない。


見てはいけないと言われて。
誰に?


私の心に―――


でも、なぜ見てはいけないの?

私、あの人と・・・もしかして、付き合ったことある?