美術が終わったということは、これで本日の授業は終わりだ。

いつもなら1時限目にあるはずの美術だが、なぜか6時限へ変更になっていた。


帰りの支度をして、校門へ急ぐ。

なぜ急ぐのか。
それはわからなかった。


ただ、心のどこかが、早くここから出たいと言っていたのだ。

だから私は急いで学園を後にした。





家に着いてからはずっと部屋にこもりっぱなし。
夕食と朝食の時、お風呂、お手洗いの時だけ部屋の外に出ていた。


「お嬢様」


「・・・なんだ。」



「最近、学園の方はいかがですか?」

夕食の時間、話しかけてくるのは、かおる。
私からは話しかけたりすることはない。


しかし、かおるから話しかけてくることがある。

その時は、相手をする。


極力は話などしたくないわけで。


「いかがも何も、いたって普通だ。」

「そうですか?」


「なぜそこを疑問形にして聞くのだ。」
「・・・なんとなくです。」


変なやつだ。


ただ、こんなかおるでも私が少し楽しみにしていることがある。
それは・・・

「かおる。」
「はい。」


「今夜は部屋にかおるの作ったお菓子を持って来てくれないか。ダージリンティと一緒に。」

「よくご存知ですね。私がお菓子作りをしていたことを。」


「焼き菓子のにおいは私の部屋まで届くからな。」


そう。かおるの作るお菓子。


かおるの作るお菓子は、私にとって一番の幸せでもある。
おいしいお菓子とともにダージリンティを飲む。

至福の時、というべきだろう。