「鬼城さん?授業始めますから席についてください。」
「・・・はい。申し訳ありませんでした。」
挙句に先生にも怒られるという始末。
最悪だ。
私はあの女を一生許さない―――
なぜ、怒りがこみあげてきているのか全く分からない。
でも、そう思ってしまうのだ。
「先生」
その時、声を上げたのはあの人だった。
「どうしました?」
「すみません、教室に忘れ物をしてしまいました。」
「仕方ないですね。取りに行ってきてください。」
「はい。すみません。」
そそくさと美術室を後にしたあの人。
もう私には関係ない。
何日ぶりにあの人のことをまともに見たのだろうか。
それくらい、私とあの人の間には溝ができていた。
溝?なぜ、私はあの人にこだわる?
と、私の手元を見てあることに気付く。
・・・ない。
教室に忘れてきたようだ。・・・絵筆を。
「先生。」
「はい。」
「私も、急いでここへ来たので教室へ絵筆を」
「早く取りに行ってきてください。授業に支障が出ます。まったく、あなたがた二人は。」
「すみません・・・」
教室へ急いで向かう。
その途中、あの人を見つける。
当たり前だ。
私もあの人も同じ教室なのだから。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
二人の間に会話はなく、そのまますれ違っただけだった。
だが、私はあることに気が付いた。