私の体は、手は、全く動いてくれない。
その絵を破れと、何度思っても破らない。
破れない―――
『姫乃』
『ひめの』
『愛してる』
そして、私はその絵をそっと置いたのだ。
破れないのなら、なくしてしてしまおう。
そんな思いが心の中にフツフツとわいてきたのだ。
だから私は、そのバラの絵を大ホールの奥の奥の、ずっと奥の方へ隠した。
二度と、見ることはないだろう。
見たら思い出してしまうから。
だから、もう見えないように、奥へ隠しておこう。
これでもう、苦しい思いはしない―――
「さようなら。・・・薫との思い出・・・。」
そして、私は大ホールを後にした。
部屋に戻り、ベットに潜る。
頭まで布団をかぶった。
何も思い出さないように、そう願って眠りについた。
眠たかったわけではない。
寝たかったわけでもない。
ただ・・・起きていると考えてしまいそうで、思い出してしまいそうで怖かったから・・・。
薫と過ごした時間を、一生懸命探してしまいそうだったから―――