また、教室内がざわつく。

薫は、くすくす笑いながら自分の席に戻っていく。



私も、いつまでも入り口にいるわけにはいかない。


とにかく席に着くことにした。が・・・


「え!?あの二人付き合ってないの!?」

「うっそ~!でも、さっき言ってたよね。」

「ぜってぇウソだろ。ありえねぇ。」

「でも、もし本当だったら・・・私薫くん狙っちゃおうかなっ。」



と、まぁふざけたことを口々に言っている人間もいるようだ。


もちろん、本当のことは言えないが、確かに先程言ったことはウソだ。


大ウソだ。付き合っているに決まっているだろう。




執事として・・・彼氏として。



そんなことを思いながら、とにかく先生の話を聞き1時限目の準備をする。

いつも芸術の準備に取り掛かるのが早いのは私。


なぜって、芸術とわかっていてテンションが上がらないわけがないではないか。


しかし、今日の私は次の瞬間にテンションが一気に下がったのだ。

「はっ、ない!?」


ない、ないないない!!



「何がないんだ、鬼城。」


「あ、いえ、その・・・」

「先生の話は聞きたくないっていうことか。」


「いえ、違います・・・。すみません。」


「話を途中で止めない。ちゃんと聞いておきなさい。」


「はい。」

と言いつつ、今はそんな場合ではない!

これは非常事態だ!ないのだ!大事なものが!




私としたことが・・・まさか忘れるなんてこと・・・