「私、友達がいなかったんです。」


あるときチエは学食でそう言った。

「大学入って、最初は学部の女の子のグループに入ったんですけど、
なんか私には合わなくて。」


「大丈夫!大丈夫!私らもう友達だから!」
「サークルも入ってないし、暇なときは控え室来れば大体いるよな!」

マリコとアキヒロが目を合わせながらそう言った。


「試験前にノート貸してくれれば、もう永遠に友達ですよ!」

俺も遅れてそう言った。


チエは小さな声で「ありがとう」と言った。
少し声が震えているようだった。


たまたま、控え室でチエと2人きりになった時があった。


「やっぱり、桜木さんに似てるね。」

チエが初めて、タメ語で話しかけてきた。