「スー、スー、スー…」


横で寝ていたチエが寝息を立て始める頃には、俺はレポートを読み終えていた。

あとはいくつか参考文献をあたって、形式に当てはめて自分の解釈を書けばいい。

自分で言うのもなんだが、自分の意見を書くのは得意だ。
少なくともチエよりは。



「書き方は丁寧ですが、あなたの読みがぼやけていて結論がわかりません。」

教授はいつもの、最初に上げて、後で落とす言い方でチエの発表を評価した。

その後、クドクドと始まるダメ出しに、
チエは「はい。自分でもそう思います。」を連呼していた。


授業後、少しヘコんでるようだったチエを、俺とアキヒロとマリコはカラオケに誘った。


「やっぱり私、向いてなかったのかな…」

カラオケボックスに向かう途中で、チエがボソっと言い出した。
風が強い日で、チエは長い髪をしきりに手で押さえていた。


いつもより一拍遅い感じで、俺たちはフォローを始めた。