「おはよーございまーす」 静寂を破ったのは、聞き覚えのある声だった。 私と朱莉が同時にドアのほうに視線を移す。 そこには、楽譜を手に持った崎田先生と、スポーツバッグをだるそうに持ちながら欠伸をする怜がいた。 「あいかわらず今日も早いね、智那と朱莉は」 崎田先生が、その場を空気で察してしまう人じゃなくてよかった。 今の、私たちのぎくしゃくな雰囲気に気づかないでほしい。