止まった朱莉の指をジッと見つめた。
手の甲は少しだけ日に焼け、ずっと部活は外でしていたのだとわかる。
朱莉のしなやかな長い指は、ピアノを弾くくせに指が短く手が小さい私の理想の手。
その手を上にたどっていくと、肩にギリギリ届かない長さのストレートの髪。
そこから覗く朱莉の横顔は、すごく強かった。
朱莉は私と違って、窓の外を見ていた。
生徒昇降口の前にそびえ立つ柳の木が、風に吹かれて揺れている。
朱莉は今、何を思っているのだろう。
いつまでもるなをかばう私にうんざりしてるの?
やっぱりコンクールの結果を重視するって言いたいの?
フラフラしている私とは正反対に、朱莉は自分を信じている。
朱莉の目は、どこまでも遠くを見据えているみたいだった。