「でもさ智那。中途半端な気持ちで歌われても、あたしたちにとっては迷惑じゃない?」



コン、ココン、コン。



朱莉が指でピアノを叩いて何かのリズムをとる。


少しして、それが今年の課題曲のサビの部分だと気づいた。



「迷惑っていうか――」

「去年、あたしたち結構結果良かったじゃん。今年はあのときを越せると思う?」



朱莉の正当な意見に、何も言えなくなる。



去年は、合唱団のベストメンバーだった。


アメリカで合唱をしていた帰国子女の先輩もいたし、声楽を習っていた先輩もいた。


メンバーのほとんどが三年生で、二年生ででれたのは私と朱莉を含めてほんの数人。



今のメンバーでは、去年以上の練習を相当しなきゃ、先輩を超すことはできない。