「あのー、すみません」



西脇先生が申しわけなさそうにドアから出てくる。



「何か用ですか?」



そう答える崎田先生の声は、演奏をとめられたことへの苛立ちを隠していない。


それを感じ取ったのか、西脇先生が心のこもっていない「すみません」を口にだした。



この2人は、普段は決して仲が悪いわけではない。


でも、音楽のことになると性格が豹変する。


どちらも音楽系の部活の顧問だから、4月は新入部員をめぐって火花を散らしていた。



ぶっちゃけ、吹奏楽部は毎年多数の新入生が入ってくれるけど、合唱部は多くても一ケタ。

でも、西脇先生の指導力よりも崎田先生の指導力のほうがダントツで飛び抜けている。