奏太(かなた)――木村奏太は、家がお隣同士のおさななじみだった。 合唱の世界では有名な指揮者、木村浩昭を父にもつ奏太は、幼い頃から音楽に囲まれながら暮らしていた。 そして、小学6年生の3月、奏太は父の仕事の都合で東京に引っ越すことになった。 それ以来、まったく奏太に会っていない。 「まだ2年しか経ってないんだけどね」 私はそうつぶやくなり、再び布団の中にもぐりこんだ。 その時、自然と視線が目覚し時計へ注がれた。