「あんた、ソプラノ?」
奏太がそうきいて目を合わせたのは、私だった。
慌ててうなずくと、私と目を合わせたまま言った。
「全体的にソプラノのピッチ低い。緊張してるかもしんないけど、このままじゃ本番のピッチ最悪」
予想外の言葉が、奏太の口から飛び出た。
悔しいけど、当たっていた。
「男子。音とり自信ない人、手あげて」
そういって今度は男子の方を見回し、手をあげている数人の人たちを確認している。
「パートリーダーは?」と問いかけて、それが怜だと分かった奏太は「まず全員が音とれるように」と怜に頼んでいた。