「智那。お願いだからそれくらい覚えてくれよ。 そんなこと、俺がいなくなったら誰も教えてくれねぇよ」 「教えてくれるの、奏太しかいないもん。 だから、絶対帰ってきてね、東京から」 悪びれた様子のない少女に、少年はまたあきれた。 その表情は、少年の実年齢とはかけ離れ、大人びていた。 「……わかったよ。帰ってくる。 ――――待ってろよ」 そして、中断された少女の歌声が再び流れ出した。 ―――― ―――