「どうしたの!?」



驚きのあまり、家中に響き渡るくらい大きな声が出てしまった。


でも、そんなことを気にする余裕なんてない。



「熱だ。たぶん、風邪」



怜が奏太のおでこに手を当て、そうつぶやいた。



「とにかく、さっきのピアノ室に運ぼう」



奏太に「立てるか?」と小声できくと、小さな頷きがかえってきた。

意識はあるようで、少しホッとした。


壁を支えにふらふらと立ちあがる奏太を、私と朱莉は急いで支えた。


立ち上がった奏太をすぐに、怜が男子にしては広くない背中に背おった。



さっきの奏太とは正反対に、よろめくことなく立ち上がった怜は、そのままゆっくりとピアノ室のほうへ歩きだした。