私が音楽室に足を踏み入れた瞬間、その空間から音が消えた。 みんな、私を見ていた。 静かに、ひたすらじーっと。 「智那」 崎田先生が、ピアノから手を離し、ピアノ椅子から腰をあげた。 「智那」 アルトが並んでいたところから、朱莉が一歩前に出た。 「どうしてここに……?」 目を丸くしている朱莉。 でも、その表情の裏側を、私は知ってる。 朱莉は、喜んでくれてるんだ。