「行こう」 奏太が私の手を引く。 その先には、今まで見るだけで嫌になった第一音楽室の扉。 私は声に出さずにうなずいた。 一歩ずつ、ゆっくりと近づいていく。 気づかない間に、無意識に手が震えだしていた。 奏太が心配そうな顔をして振り向き、ぎゅっと強く握りかえしてくれた。 『大丈夫だよ』 『1人じゃないよ』 そう言ってくれてる気がした。 奏太が音楽室の扉を開けた。 私たちは、力強く一歩を踏み出した。