そのまま私は奏太に手をひかれ、すぐ近くにあった第一音楽室に引きずり込まれそうになった。



「待ってよ奏太っ」



私は慌てて第一音楽室の入り口付近で奏太の手を振りほどく。



「何やってんだよ。早く――」

「早くじゃないよ。私の立場、わかってる?」



真っ正面から、奏太を見つめる。


窓から入り込む太陽の光で、奏太の柔らかい髪の毛が明るい茶色に照らされる。



「立場って……」

「私はっ、合唱団辞めてるの! もう――第一音楽室に私の居場所はないの!」