その瞬間、音楽室に風が吹いた。
温かい、優しい、そして、どこか懐かしい風だった。
「かわんねぇな」
透き通るような声が、はっきりと私の耳に届いた。
後ろのほうに人の気配がした。
振り返ると、ドアのほうに1人の少年――ううん、男の人が立っていた。
切れ長の目、でもどこか温かみのある瞳。
高い鼻を中央に、整った顔立ち。
窓からさす日光に照らされて、髪は明るい茶色に染まっていた。
「――か――なた……?」
そこに立っていたのは、私が間違えるはずもない人。
2年前よりずっと大人びた奏太の姿があった。
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