「な、な、なんで……!」 「智那が倒れてきたから、俺が支えてやったのー」 「倒れてきたって……怜が引っ張ったの?」 「ちょっと腕掴んだだけだって。お前、意外と肉ついてんな」 「さ、サイッテー!」 私は右手を上げて、怜の肩を叩こうとした ――ら、軽々と怜に手を掴まれた。 その手を掴む怜の瞳が、真剣そのものだった。 え? 「お前、合唱団やめるって本気か?」 いつもよりオクターブくらい低いトーンで怜が呟くように言った。