「西脇先生だって言ってた。『本当は合唱やめてほしい』って。それでも、城山さんは自分勝手に続けるの?」
部長に言われて、あの日のことを思い出した。
合唱の練習中、西脇先生が音楽室を訪れたときのことを。
いつもの優しい笑顔で私たちに「やめろ」と言った西脇先生。
あの笑顔の裏に、どんの思いが隠されていたんだろう。
「城山さんは――」
「もういい」
部長の言葉を遮る私の声。
後ろの方から、かすかに足音が聞こえた。
でも今は、それを気にしている余裕なんかない。
「わかった。もうわかったから」
鼻の奥がつんとした。
いやだ、ダメ。
今泣いちゃダメ。
ここで、私は泣けない。
泣いちゃいけない。