「合唱なんかって、何?」



そのとき、廊下にかわいた音が響いた。


目の前にいる部長の右頬が、さらに赤くなっていた。


鋭い視線が、私へと注がれる。

冷たく、尖っている、鋭い視線。



「何すんのよっ!」



部長が自分の右頬をおさえる。


この頬をぶったのは、他でもない私だ。



「暴力ふるって――……あなた、いったい何がしたいのよ!」

「私、嫌いなことがあるの」



部長の言葉を無視して、私は切り出した。


私の、本当の気持ち。



「音楽をバカにされること。それが一番大っ嫌い」