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「かわんねぇな」




その言葉で、少女の歌声が中断される。


グランドピアノを置いてもまったくせまく感じない広い部屋に、子供の声が響き渡っている。


「だって、わかんないんだもん」



歌っていた少女がか細い声で言い分けをする。



「だからぁ、いってるだろ?

そこはもっとピッチあげて」

「ピッチってなに? 奏太ぁ」



『奏太』と呼ばれた少年は、あきれたようにため息をつく。

窓から流れてくる春の風が、2人の間を吹きぬけた。