私の頷きを見て、少し安心した表情になり、それから鞄の中から何かを探して取り出した。

それは色気も何もないただの茶封筒だが、受け取ると中に何かが入っていたので取り出してみると、電話番号とメールアドレスが書かれた紙が入っていた。


「最後に、どういう形であれ家に帰ったら必ず俺に連絡してきてくれ。

いつになってもいい、ずっと待っているからこれだけは絶対に守ってほしい」


左手が私の右肩に伸し掛かり、僅かに力が入るその手に私の鼓動は大きくなった。

その鼓動があまりにも大きく感じ、すぐ目の前にいる入瀬に聞こえているのではないかと思い恥ずかしくなり、更に鼓動を大きく、そして、速くした。


「分かった。

絶対にお前に電話する」


ぽんぽんっと、右肩を左手が二度軽く叩き、ゆっくりと離れていった。


「あと、それ使えよ。

無一文で渡っていけるほど、世の中は甘くねえぞ」


もう一度封筒の中身を確認すると、連絡先が書かれた紙以外に一万円札が一枚入っていた。



いくらなんでも、こんな大金を貰うわけにはいかない。



そう思い、慌てて入瀬を見た・・・