横になったままで携帯電話を開く。

私の携帯電話のアドレス帳には父・母・姉・自宅、そして、たった一人の友人である有松由利(ありまつゆり)の五件しか登録されていない。

誰かからの電話などくるはずがない。



トイレへ行くのにも大勢でしか行けないのが嫌いだった。



陰でこそこそ他人のあることないことを噂するのが嫌いだった。



でも、姉のことを盾にする自分が一番嫌いだった。



もともと人付き合いは苦手だったのに、姉の名前が出入りするうちに複雑になり、手の付けられないような作業みたいなものになってしまった。

姉が悪いわけではない。

本音を言えば母が悪いのだが、実際は私自身が悪いのだ。

分かっているだけに余計に苦しい。