「お前のお姉ちゃんも歌上手いの?」


「えっ」


一瞬だけその言葉を聞いて目を見開き、それから勢いよく入瀬のほうを振り向いた。

さきほどと表情は何一つ変わっておらず、私だけが一人焦り、下を向き恥ずかしくなってしまった。

聞き手のいない歌、そのはずだったのだが聞き手はここにいた。

誰にも見せることのない私の自己主張を見られてしまった。


「聞いていたの?」


「偶然な」


「そう・・・」


ずっと、誰かに聞いてほしいと思っていたというのに、ずっと、誰かに見てほしかったというのに、実際にそうなるとこんな気持ちになることを予想していなかった。



嬉しくなると思っていた



気持ちが晴々しくなると思っていた



だが、どれも違っていた。