トラックの中は他愛もない会話が続いていた。

家を飛び出したということを忘れてしまいそうなくらい会話が弾み、楽しささえ感じてしまうほどだ。


「あーあ、これから何人の運転手と出会うか分からないけど、こんなにいい奴が最初だと後から困っちまうな」


時間からして、入瀬の仕事ももうそんなに長くはないだろう。

仕事が終われば、私はまた別の運転手を探し、その運転手に乗せてもらわなければけない。

次の運転手がどんな人なのか、そんなこと今の段階でもちろん分かるはずがない。

怖い人なのかもしれないし、嫌な人なのかもしれない。

最初にこれだけの話しやすい人に会ってしまったら、この先ずっと余程の人ではない限りはこんなに楽しいとは思えないだろう。


「そんなこと言っても、俺はお前にはついていかないぞ」


「冗談に決まっているだろ」


冗談ではなく、紛れもなく私の本音だった。

更には、最後まで入瀬が運転手であることを心の奥底で望んでいた、叶わないと分かっていても望んでいるのも本音だ。