「急がなくていいって言ったのに」


慌てて戻り、肩で息をしている私を入瀬は面白おかしく笑っていた。

その目にはうっすらと涙も見え、そこまで笑う必要はないだろうと少しだけ機嫌を悪くしたふりをする。

しかし、入瀬にはそんなものは全く通用しなかった。


「10分くらいしたら出発だから、それまでに戻ってこいよ」


と言いながら、自分がトラックから離れていってしまった。

残された私は、一人でトラックの横に立っているのも何かおかしな感じがするので、とりあえず済ませるものだけは済ませておこうとトイレに向かった。