海風の吹くほうに足を運び、海の目の前までのところで止めた。



何に言葉を失うのか、何に心を奪われるのか、何に胸がぐっとくるのか今は分からない。

分からないが私はもう旅立ってしまったのだから、ここからは後戻りなどしたくはない。

きっと、どこかに私の求めているものがあること、それが私を変えてくれるものであると信じて行くしかないのだから、迷わずに突き進もう。



小さく息を吸い込み、頭の中に浮かび上がった歌を歌う。

歌うことは好きだが、人前で歌うことはない。

そのことは母を落胆させてしまうことだと中学二年のときに気付き、それからこうして一人にならない限りは歌わなくなった。

聞き手のいない歌に最初は悲しさばかりが募り泣きそうになったが、それでも歌うことが好きということは変えられなく、こうして歌っている。

誰にも見せることのない、これが私の自己主張なのかもしれない。