五分も待たないうちに店の出入り口から台車を引きずる音が戻ってきた。


駐車場に怪しい人がいる


もしかしたら、店の人にそう言ってきたのかもしれないと思うと、再び心臓の音が大きくなり、頭の中がパニック状態になる。



私の前に立つと、男の人は先ほどと同じように少し驚いた表情をして、すぐに冷静な顔に戻った。

本当に待っているとは思わなかったのだろう。

だけど、今の私はあなたにすがるしかない、それくらいの気持ちで声を掛けて、ここで待っているのだ。



そんな私の気持ちなど知るはずもなく、無言でトラックの後ろに何やら大きい箱のようなものを二個入れて、台車を横のスペースに戻して、さっさとトラックに入ってしまった。


(やっぱり、駄目か)


誰がどう見ても怪しいから、当然といえば当然だろう。

もしかしたら、店の人に私のことを言ったかもしれないから、もうここにはいれないのかな。



たった一人・・・



それも最初の一人に断られただけだというのに涙が出そうになり、流してしまったらもう立てなくなりそうな気がしたので、必死で堪え空を見上げた。

青い空が少しだけ滲んで見えるが、それでも綺麗な青空だ。


「何してんの。

早く行くよ」


「えっ」


その言葉に素早く振り向く。

男の人は助手席のドアを開けて、ここに乗れとばかりに指を助手席に向けていた。


「助手席片づけてたんだよ。

乗らないならもう行くよ」


運転席に足を進める男の人に続き、私は一歩踏み出した。